幸福は時に不幸と隣りあわせ。
幸せがすぎると、いつその幸せを失ってしまうのか
考えただけで不安に苛まれてしまうものだ。
だが、今のアレンにはそんなことは関係ない。
生まれて初めて、たった一人の存在に惹かれた。
沢山の誰かに好意を寄せられるよりも、
その人だけに望んで欲しいと強く願った。
そんな愛しい相手……ユウに受け入れてもらえたのだ。
代償に己の羽をボロボロにしても、そんなことは大したことではない。
女々しいと罵られようが、ただユウの傍にいつも居たい。
その望みが叶った事で、アレンの心は嬉しさで溢れていた。
ほんの数日休んだだけで、アレンの羽は生えそろい、
以前のような艶やかさを取り戻していた。
いつまでも大事な伝令役を休むわけにもいかなかったので、
アレンはまた今日から役目につくことにする。
久し振りに広げた羽は、とても軽やかで、ひどく優雅に感じられる。
古い羽が抜け変わった分、新しい羽毛はアレンの身体を
優しくとり巻いていた。
「うん。これなら大丈夫!
一仕事しても、充分ユウのところまでへ飛んでいける……」
そう嬉しそうに呟くと、可憐な顔で零れんばかりの笑みを浮かべた。
今の彼はそれこそ幸せの真ん中にいるのだから仕様がない。
元気に大空を飛び回っては、その日の伝令役を務めあげた。
「お〜い、アレン、今日は元気そうじゃないか!」
「うん! 少し休んでいたせいか、今日はとっても具合がいいんだ」
「そりゃあよかった。また帰りに話でもしに寄って行かないか?」
「う〜〜ん、せっかくのお誘いだけど、今日はこれから用があるんだよ。
ごめんね。また今度っ!」
ユウの元へ急ぐアレンには、彼を気遣う他の仲間など眼中にない。
しかしそれはある意味とても危険を孕んだ行為だった。
「……ちぇっ、アレンのヤツ……」
アレンは自分では意識していなかったが、
未だ天使の中でアイドル的存在である事には変わりは無かった。
そんなアレンが実は嫌われ者の天使……ユウの元へ通いつめているという噂は
人知れず天使たちの間で噂になっていて、
以前から彼に好意を抱いていた者のなかには
それを好ましく思っていない輩もいたのだ。
もとよりアレンの場合、伝令役ということで、彼よりより上級の天使などいくらでも居る。
ユウの地位もアレンよりは上にあった訳だが、
自分より上の位にある天使たちと気安く会話できるのは
なによりも『神様のお気に入りだから』という折り紙つきだからに過ぎなかった。
「神様のお気に入りだからって、何でも思い通りになると思っていたら大間違いだぞ」
機嫌よく飛び去るアレンの後姿を、そんな不吉な呟きで見送る影がひとつ。
それが災いの種だとも知らず、アレンはひたすらその翼を羽ばたかせていた。
これから訪れる運命など知りもせず、意気揚々とアレンはユウの城へと駆けつける。
つい昨日も会ったばかりだというのに、
ほんの数時間顔を見れなかっただけで、もう随分会っていない気分だ。
「……ユウっ……!」
満面の笑みでユウの元へと駆けつけると、
その胸元へと思い切り飛び込む。
ふわりと薔薇の香りが二人を包み込み、
そこが誰にも邪魔されない二人だけの空間であることを感じさせた。
それがアレンの気持ちをより一層華やかなものにさせる。
「もう勤めは終わったのか?」
「うん!キミに会いたくて、速攻で片付けてきちゃった」
「……翼は……随分生え揃ったな……」
「ええ……お陰さまで」
つい先日までは見る影も無かった羽が、
今は綺麗に生え揃っている事に安堵感を覚えたのか、
ユウはアレンの翼にゆっくりと触れては撫でてみせる。
そんなユウの仕草をくすぐったいと言わんばかりに
アレンは少しはにかみながら彼を見上げた。
「あんな馬鹿なことをするのは、お前ぐらいなもんだ」
「もう……そんな意地悪言わないでくださいよ……
だけど、そんな馬鹿をしたお陰で、今キミとこうしていられる。
だから僕は幸せです……」
恥ずかしそうに頬を赤らめながらその胸に顔を埋める。
「本当にへんなヤツだ……俺のためにあんな無理をして……
だが、そんなお前に惚れた俺も、たいがいイカれてるがな」
ユウは己の胸の中にいる天使を強く抱きしめてみせた。
不思議だった。
今までどんなに美しい天使に誘いの言葉を掛けられても
気持ちが動いた事など無かった。
それが美の女神だったとしても同じことだ。
他者とかかわりを持つ事を拒み、剣を護る静かな時間に心の安らぎを感じていた。
いつしかそれが当たり前になって、
孤独な生活を楽しんですらいたというのに。
今はどうだろう?
腕の中の天使がこの場所を訪れるのを心待ちにしてる。
この笑顔に触れ、肌に触れ、髪を撫でることを夢にまで見る。
そんな自分の変わりように困惑を隠せないユウだった。
ユウはアレンの顎を軽く摘むと、その唇に自分のそれを重ねる。
「……んっ……ふ…ぅ……」
以前はただ触れるだけの口付けが、
今ではどんどん深いものへと変わっていた。
小さい唇はとても甘くて、味わうたびにその甘さを増す。
ちらりと覗く桃色の舌に己の舌を絡ませれば、
そこから漏れ出す甘い吐息に眩暈がした。
もっとこの声が聞きたい。
もっと甘く啼かせてみたい……
そんな悪戯めいた甘い想いがユウの気持ちを占領する。
角度を変えて深く貪るように舌を絡ませ吸い上げると、
アレンは全身の力を失ったかのようにその身をユウに預けだした。
「……アレン……」
「……ん……ユ…ゥ……ねがい……もっかいキス……して……」
うっとりしたように瞳を潤ませ、蒸気した頬でそう呟かれると、
ユウの胸がドクリと脈打つ。
全身の血が逆流したように息苦しくなってしまうのだった。
今まで感じたことの無い熱い想いを持て余しながら、
ユウは再び深くアレンの唇に口付ける。
互いの熱を交換し合うかのように、長く激しいキスがいつまでも続いた。
「……お前のせいだ……」
「……え……?」
「俺をこんなに熱くした……」
「……ユウ……僕も……なんだか……変なんです。
全身の血が煮え立つように熱くて……
……キミが恋しくてどうしようもない……」
「そうか……なら……」
ユウは一瞬微笑んだと思うと、アレンの身体をゆっくりと押し倒す。
再度唇を塞ぎながら、その大きな掌で脇腹を撫でてみせた。
「……うっ……ふぅ……んっ……」
唇をふさがれながらも、
零れ落ちる甘いさえずりがおさまる事はなかった。
その唇が徐々に耳元へ移動し、耳朶を甘噛みされると、
アレンの身体が小さくピクリと震える。
ゆっくりと耳を舐められ、
指先で胸の飾りを弄ばれると、アレンの唇から漏れ出す声は
徐々にその切なさを増していった。
「……やっ……あっ……あ……んっ……」
ユウの唇が少しずつ首筋へ、胸元へと移動する。
アレンの肌を少し強めに吸い上げるだけで、
そこには桃色の綺麗な痣が浮かび上がった。
まるで白い花園に桃色の花びらが舞うように
ユウはひとつふたつとその数を増やしていった。
チリリとした鈍い痛みが走るほどに、胸の奥が甘く疼く。
その疼きはどんどん熱を帯び、アレンの身体を犯していく。
「ぼ……僕……変に……なりそうです……」
「ああ……俺もだ」
「僕たち……どうなっちゃうんです……か……」
「さぁ……どこまでいけるか……試してみるか?」
ユウの翼がゆっくりとアレンを包み込む。
柔らかい羽が肌に触れる心地よさと、ユウの掌から伝わる熱で
アレンは溶けてしまいそうだと思った。
いっそ愛するユウの腕の中で溶けてしまえるならそれでも構わない。
この瞬間、泡となって消えてしまってもいいとすら思える……
ユウは小さな胸元に飾られた木の実をゆっくりと口に含むと
舌で転がすように舐め取った。
「……あっ……やぁっ……!」
瞬時に走る甘い痺れに、アレンが小さな嬌声を上げると、
今度は軽く歯を立てて甘く齧って見せる。
「……くっ……ふうっっ……」
己の愛撫の一つひとつに、心地よいほどに反応を示す。
そんなアレンがユウは愛しくてたまらなかった。
薄い布越しに触れる腹部の隆起に手を下すと、
アレンは腰をピクリと震わせる。
ゆっくりとその布を拭い去ると、そこはもう既に甘い蜜を滴らせていた。
「あ……だめ……そんな……とこっ……!」
アレンは少し逃げ腰に身体を捻らせるも、
それが完全な拒否ではない事を示すように
簡単にユウの手中に収められる。
「……やっ……あっ……ああっ!」
そして暖かい掌の中で軽く擦りあげられただけで
アレンはその手の中を熱い蜜で溢れさせ、
初めて感じる快楽に意識を奪われてしまったのだった。
額に汗で張り付いた細い髪を掻き上げ、
白い額にキスを落とす。
あまりの愛しさに腕の中の小鳥を
めちゃくちゃにしてしまいたい衝動に駆られる。
だが、つい先日まで羽をボロボロにし傷ついていたことを思うと、
早急に己の欲望を押し付ける事に
いささかためらいを感じていたユウだった。
そして互いの温もりを肌に感じながら、
いつまでも永遠にアレンと一緒にいたいと願うのだった……
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≪あとがき≫
更新滞っててスミマセンでした;
ようやく想いが通じ合い、プチエッチまでたどり着いた二人でしたvv
本当は18禁にしようと思ったのですが、リクエストもあり、15禁止まりにしました。
まぁどちらにしても後日18禁は書くのですが、今回はこのぐらいで……(^^;)
一応次回から後半に突入します。
二人を待ち受ける壮絶な運命。
はらはらドキドキ、そしてちょっとお涙頂戴……といったカンジです。
只今、10月のオンリーに向けて新刊作成中です★
その加減で多少更新が遅れるとは思いますが、
楽しみにお待ちになっていてくださいませ〜〜m(_ _ ;)m
物語はまだまだ続きます(〃⌒ー⌒〃)ゞ
これからもまだまだお付き合い下さいねっっd(⌒o⌒)b
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〜天使たちの紡ぐ夢〜 Act.6